正社員

北の大地にやってきた

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出発は月曜だった。

雨の中、ぱんぱんになった登山用のリュックと作業着で重いバッグを抱えてバスに乗る。

薄暗い会社には取締役が2人ともう1人上司がいるだけ。他は夏休みやら出張やらで出払っていた。

まさか台風の影響で仙台発のフェリーが休航になるなんて、楽天家なボクと上司には予想外の出来事。

それでも調べてみると、青森発のフェリーは休んでいないらしい。そうとなれば、今日の目的地は決まった。重い荷物を後部座席に放り込むと、助手席につく。

横浜ベイブリッジからいつも見えるみなとみらいの街並みは今日ばかりは真っ白で見たもんじゃない。下手すりゃ前の車も見えないほど、フロントガラスに雨粒が叩き付け、水しぶきやら霧やらが視界を奪った。

強い風にハンドルを持っていかれそうになりながらも、目の前を睨む。 それだけ必死だった。

東北道を盛岡に着くころには日が傾き始めていて、その日は盛岡駅近くで一晩泊まることに決めた。 

火曜日の朝、ホテルを出ると雨が止んでいた。

2時間ほど引き続き東北道を北上する。青森駅は晴れていて気持ちがいい。歌でイメージしていた景色とは打って変わって、夏の津軽海峡は晴れ晴れとしていて陽気な歌の方が似合う。

4時間も大きな水たまりを黙って眺めていると、海の向こうに函館の大地が見える。 はるばる来たぜ、のフレーズが自然と頭に流れ出す。

20年ぶりの北の大地に最初は感動もなかった。どこにでもありそうな地方の街。それでも、函館から北へと向かうと、おぉなるほどと これが北海道かと。

高速から覗く自然が本州のそれよりも美しい。右側に海を、左側に山々を、時々牧草地と牛たちを。ボクはまた遠いところへ来てしまったのだと実感した。

ホテルの近い苫小牧駅は夜になると人気も乏しい。街並みだけは高い建物が多いものの、活気はあまりなく孤独。寒いとは言わないものの、涼しい。

水曜になってようやく仕事。

大通りをちょっとすぎるだけで、原生林が辺り一面に姿を現す。熊や鹿も遭遇率は高いらしい。

仕事自体は来週で一段落。また東京に戻るけれど、また来月も二週間ほど来ることになっている。