無職

無職と彼女と、その顛末。「2.ありえない」

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前回:無職と彼女と、その顛末。 「1.他の男を選んだらどうか」

全くといっていいほど愚痴を言わないし、人に不満を言わない彼女でした。しかし、以前に1回だけ憎んでいる相手がいるという話を聞きました。それは彼女の叔父、彼女の父の弟です。昨日彼女は唐突にその叔父の話を話し始めたのです。

「叔父さんはね、もともと引っ込み思案で人付き合いが不得意だったのね。だから仕事もうまくいかなくて、実家で暮らしてた。1回は外へ出ようと思って新しく仕事に就いたこともあったらしいの。おばあちゃん(彼女の父方の)は馬鹿だから、ある程度叔父さんにお金を握らせたみたい。でも一ヶ月ですぐ実家に戻ってきちゃってね。」

「心の病気ということはわかってるんだけど、もうとにかく面倒くさいの。叔父さんは。」

「もし、あなたがそんな叔父さんみたく働かずに無職のままでいることを受け入れるようであれば、


それはありえない。」




僕の目を真っ直ぐ見据えて言い放つ姿は今までの彼女からはそれこそ”ありえない”姿でした。

僕自身ずっと無職のままいる気なんかなかった。30歳までもあと数年しかない。だけど、どう新しい仕事を決めればいいのか全くイメージできずにいた。それで今ここにいる。

それでも、そんな僕を必要としてくれている人がいる。それが彼女だと思っていた。我ながら馬鹿だった。放った言葉と裏腹に心のどこかで、それでも「嫌だ、あなたがいい」と言ってくれるんじゃないかと期待していた自分がいたのです。全く阿保らしいですよね。

彼女は見た目ふわふわしているけれど、しばしば頭のキレる一面がありました。しかし、それを指摘してもはぐらかされていたのですが、昨日は彼女のその一面が全面的に出ていました。

終始、笑顔の絶えなかった彼女が、真顔ですっと僕の目を見ている状況には緊張しました。何を言っても通る気がしませんでした。

「とりあえず出よう。」

彼女の一言で会計を済ませました。いつもなら2時間以上入り浸るところですが、今日は1時間ちょっと。空気があまりにも重かったです。そんなつもりはなかったんですが・・・。

「今後あなたはどうしたいの?」

「・・・。どうしたいのかわからないんだ。」


その後駅についた僕らは20分ほど改札前で答えの出ない話し合いをしていました。以前は駅前で修羅場になっているカップルを見ては「俺らもあんななっちゃうのかな~?」なんて笑って話していたのが、まさか本当にそんな時が来るなんてですよね。過去があまりにも懐かしくて、今日まで平和だったのに。あんなこと間違っても言うんじゃなかったと激しく後悔しました。

「明日は仕事遅いんでしょ?俺はまだ大丈夫だけど、まだ話す?それか、また日を改めて話さない?」

「帰る。」

帰りの電車も一切会話なし。

「また連絡するから。」

乗り換えの駅で彼女はそう言うと、電車を降りました。

(次回に続きます。)