雑文

【思い出】幻の公園

何年前だっただろう。とにかく当時僕は小学生の低学年だった。
ボクはいつも団地のみんなと遊んでいた。

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特にその記憶の中で自慢できるのはガキ大将がいたことだ。
写真が見せられないのが残念だけれど、見ればすぐわかる。

名前はトム。戸村だからトム。

小学六年生のわりに大きく、脂肪をつけた体で、
そしていつも舌を外に垂らしていた。
僕らは彼のルールに従い、誰も刃向かうことはなかった。
とはいえいたずらを越えることをしたことはなかったし、みんなもそれで満足していた。

だから支配力は強力とはいっても、彼はただガキ大将であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。
他に印象深いのがもう一人いる。

しんぺえ君。

彼は僕の隣に住む、一年年上の友達だった。
トムがいないときは彼が中心となった。トムがボスならしんぺん君はリーダーだ。
しんぺえ君はどのスポーツをやらせてもピカイチで、頭もキレたし、そして遊びがとても上手だった。

数え切れないくらいの種類の遊びを教えてくれた。
おにごっこや、木登り、夏祭り、釣り、
秘密基地、駄菓子屋、かまくら、ノコギリクワガタ、青いすじのトカゲ。
とりわけ、団地の四階からのしょんべんは僕らにいとっての成人儀礼だった。

人望が厚く、まわりには必ず誰かがいた。

僕も彼のことは大好きだった。
今でも遊びの楽しさを教えてくれた彼には感謝してもしきれない。


そしてその日はいつものようにトムの提案にそって、10人くらいで自転車ドロケーをすることになった。
自転車ドロケーというのはもちろん自転車に乗って行うドロケーのことだ。
でもどうやって捕まえるのかは今となってもわからない。
というのも、誰かを捕まえる前に中断してしまったからだ。

公平な分別の結果、僕はケイサツの側となった。
トムやしんぺえ君はどろぼう側。なんとなく弱気になった。
スタートすると、どろぼう達は住宅の路地へとマウンテンバイクを走らせていった。
一分後、僕らケイサツも出発した。しかし全然ドロボウが出てこない。

残された僕達の前にドロボウ側が戻ってきたのは20分後。
夕日が団地をオレンジ色に染めていた。
彼らは自転車ドロケーなど忘れてしまったように、目を輝かせてこう言った。

「実はオレらこの路地の奥を走ってたら面白い公園を見つけてさ。そこで遊んでたんだよ。」

もちろん僕らケイサツもその場所が知りたくなった。
しかし、トムもしんぺえ君も他のドロボウもその場所をなぜか教えてくれなかった。
その後トムの指令で自転車ドロケーは中止されて、他の遊びとなった。

腑に落ちなかったけど、僕は新しい遊びに集中することにした。
そして6時のチャイムとともに皆解散となった。

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翌日になっても僕は公園のことが忘れられなかった。
でもやっぱりそのことをしんぺえ君に聞いてもはぐらかされてしまうだけだった。
だから僕はたまに一人でマウンテンバイクにまたがって路地の先を探した。
路地自体は入口からくねくねしながら数百メートル先で行き止まりとなっていて、
顔のない一軒家やアパートがずっと並んでいる。
公園を探す際には他人の住居の庭に無断で幾度も入ってみたりもした。

でもなかなか公園は姿を見せてはくれなかった。
中学生になるころには、マウンテンバイクからママチャリになり、地図も使えるようになっていた。
でも結局それでも見つかることはなかった。

そもそも公園など地図上に存在しないのだ。
しかし、すでにその時にはトムやしんぺえ君や他のともだちも引越してしまっていた。
そういった一時的な居住のための団地だった。

そして、しんぺえ君まで行ってしまうとみんなまで来なくなってしまった。
たそがれ時の団地は死んだみたいに静かになった。

最終的に僕がその不思議な公園を見ることは叶わなかった。
見つけてやりたいけど、どうしようもなくなった。
地図にも載っていなかったのだから、ドロボウ側の人たちが嘘をついたと考えるのが普通だろう。

でもなんでそんな嘘をつく必要があったんだろう。
もしかしたら路地を走っているときに友達のお母さんと会って、お菓子をご馳走になっていたのかもしれない。
そういった隠したい内容があるのかもしれない。
でも実際それはなんだったんだろう。

・・・・・・。

根拠がない以上、嘘だという話にはあまり確信がもてない。
やっぱりわからずじまいだ。 

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それが今となって頭の中に思い出される。
どこかで干からびた猫みたいにその魅力的な公園が僕を呼んでいる気がする。
その行き止まりの路地の奥のどこかから。